川崎市幸区の糖尿病専門医のいるクリニック
(内科・糖尿病科・循環器科・胃腸科・甲状腺外来・内分泌・肥満)

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松葉医院

お知らせ

2026.09.04

肥満と肥満症の違いとは?~肥満症外来・ダイエット外来の保険適応について~【医師監修】

最近、肥満症外来への保険適応の問い合わせが増えています。
「肥満症外来は健康保険で受診できる?」
「自分、身長160cm、体重70kgなら保険になる?」

こうした質問をよくいただきます。
結論からいうと、「肥満症の診断基準」と「肥満症治療薬を保険で使える条件」は同じではありません。

BMIが高いだけで、すべての減量治療や注射薬が保険適用になるわけでもありません。この記事では、肥満についての基礎知識と2026年7月時点の保険適用基準を解説しています。

肥満と肥満症の違い

この2つは似た言葉ですが、医学的にはまったく異なります。
まず「肥満」というのは、あくまで体重と身長のバランスを表しているだけの体格の指標です。一般的には、体重を身長の二乗で割った値 BMIで表します。このBMIが25以上になると「肥満」と考えます。
一方で「肥満症」は、肥満に加えて、糖尿病や高血圧、脂質異常症、その他にも健康に影響を及ぼす状態や疾患がある、あるいはそのリスクが高い場合に診断されます。
つまり重要なのは、「体の中で何が起きているか」です。同じ体重であっても、健康への影響が少ない人もいれば、すでに治療が必要な状態の人もいます。ここを混同してしまうと、「太っているからダメ」「やせているから大丈夫」といった誤解につながります。医学的には、見た目ではなく体の状態を評価することが大切です。

肥満症発症のメカニズム

では、なぜ肥満が起こるのでしょうか。
多くの方は「食べすぎ」や「運動不足」が原因だと考えると思います。もちろん、それも一つの要因です。しかし、それだけで説明できるものではありません。
肥満は、生理的要因・遺伝的要因・生活習慣・社会的、環境的要因が重なって起こります。
例えば体には食欲を調整する仕組みがあり、脂肪が増えるとレプチンというホルモンが「もう食べなくてよい」という信号を送ります。しかし、肥満ではこの働きが弱くなることがあります。
また遺伝的に太りやすさには個人差があります。
肥満関連遺伝子の多型による代謝効率の差異や、腸内細菌叢の変化によるエネルギー吸収増大などが挙げられます。
さらに、睡眠不足によるグレリン過剰による食欲亢進、生活リズムの乱れ、慢性的な心理社会的ストレスとコルチゾール過剰なども影響します。
加えて、超加工食品の普及と糖質・脂質過多など食べ物が手に入りやすい環境、運動しにくい生活スタイル(デジタル化・都市化)など、社会や環境の影響も大きく関わります。
このように肥満は、単なる意志の問題ではなく、体の仕組みと環境の影響が重なって起こります。

そして重大な事実!!現代社会は、普通に生活しているかぎり不健康になる社会環境なのです!!健康の社会的決定因子(SDH:Social determinants of healths)というものが言われていますが、これについてはそのうち。
と、いうことで「太っているのは自己責任」「太っているには自分が食事や運動を頑張らないから」など、自分を責めるのはやめましょう!

肥満症は多臓器に影響する全身疾患

肥満がさまざまな要因によって起こることをお話ししました。
では、その結果として体にどのような影響が出るのでしょうか。
重要な点は、肥満は単に脂肪が増えている状態ではないということです。
肥大化した脂肪組織は、ただエネルギーをためているだけではありません。実は、炎症に関わる物質や代謝に影響する物質を分泌します。
代表的なものとして炎症性サイトカインやアディポカインがあり、これらが全身の臓器に影響を及ぼします。
その結果、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がるほか、脂肪肝や腎臓への負担、睡眠時無呼吸症候群や喘息、腰椎症や膝関節症などへの影響も出てきます。このように肥満症は、体全体に影響する“全身疾患”として理解することが大切です。

肥満症外来・ダイエットの保険適応について

最近、とっても問い合わせが増えています。
問題だと感じていますのでは、実際の肥満症の診断基準と、保険診療の基準にズレがあるという点です。

医学的には、BMI25以上で内臓脂肪の存在や、それにともなう健康合併症があれば肥満症と診断されます。しかしながら、実際の保険適応は、もう少し悪い状態の肥満症の方々が対象になっています。

肥満症と診断されても、すぐに薬剤を保険で使用できるわけではありません。保険診療で薬剤を使用するには、原則として次の条件をすべて満たす必要があります。
下記の条件にご自身が当てはまらないと考えている方の中にも、精査しますといくつかの健康障害が見つかる方は多くいらっしゃいますので、最終的には一度ご相談していただいた方がよいかもしれません。

1.高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがある

3つの病気のうち、少なくとも1つの診断、また治療中であることが必要。

2.BMIと健康障害の条件を満たす

 次のどちらかに該当する必要があります。
・BMI 27以上で、肥満関連の健康障害(11種)のうち2つ以上ある。
・BMI 35以上で、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがある。
・BMI 27以上で、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群がある。

3.食事療法・運動療法を6か月以上行っても効果が不十分である

注射薬から治療を始めることはできません。処方する医療機関で治療計画を作成し、3~6か月以上、食事療法と運動療法を継続しても十分な効果が得られないことを確認します。心不全がある場合はすぐに始められます。

この期間には、2か月に1回以上、管理栄養士による栄養指導を受ける必要があります。食事や運動の記録も重要です。

4.定められた要件を満たす医療機関で治療する

薬剤(ウゴービとゼップバウンド)は、どの医療機関でも保険で処方できる薬ではありません。専門医、教育研修施設、常勤の管理栄養士、副作用に対応できる体制など、国が定めた施設要件を満たす医療機関で治療する必要があります。

肥満症の治療はまず食事・運動療法が基本ですが、これらを続けても十分な減量が得られない場合や、合併症の状態により薬物療法も検討されます。
GLP-1(ウゴービ)やGLP-1/GIP(ゼップバウンド・マンジャロ)などの薬剤を併用すると、体重減少量は大きく、筋肉量より脂肪量の減少が優位になります(注;筋肉量も落ちます)。
しなしながら、薬は万能ではありません。食事・運動療法の基礎が無い場合は、薬剤中止と共に明らかなリバウンドをして、薬剤開始前に近い体重に戻ってしまうこともわかっています。

当院では、管理栄養士、健康運動指導士、医師などが併走し体組成を確認しながら皆様の減量をサポート、そして、このリバウンドという課題に取りくんでおります。
薬剤に頼らず-10%以上の体重減量に成功した方もおられます。気軽にムリなく、のんびり健康と美を手に入れましょう!
高度の肥満症がある場合は、痩せることも重要ですが、大切なのは毎日を健康に楽しく過ごすことです。

以上、簡単なまとめでしたが参考になったでしょうか。当院は、川崎市幸区で生活習慣病、糖尿病専門の医師によりダイエット・減量外来も行っています。

薬剤の保険適用の簡易判定ツールをホームページに掲載しています。
体重増加でお悩みの方は、お気軽に御相談・お問合せ、ご予約ください。

参考文献
日本肥満学会編.肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版.2022.
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厚生労働省.セマグルチド製剤の最適使用推進ガイドライン(肥満症).2026年6月改訂.
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執筆・監修 松葉怜
※副院長の肥満症について簡単に解説した基礎動画はこちら