川崎市幸区の糖尿病専門医のいるクリニック
(内科・糖尿病科・循環器科・胃腸科・甲状腺外来・内分泌・肥満)

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松葉医院

お知らせ

2024.04.14

糖尿病の食事療法

今回は糖尿病の食事療法について簡単にまとめていきます。参考にしてください。

糖尿病を含め生活習慣病の管理には、適切な食事管理が健康状態を維持する上で非常に重要です。
以下に、食事療法の基本的な知っておいてほしいことや、いくつかのポイントを示します。ただし、具体的な療法は、個々の状態によって変わりますのでかかりつけの先生と相談してください。

「食事の摂り方」

 最近では、「個々人の食事パターンを評価しながら、包括的に適正な食材の選択を促す。」「規則的に 3 食を摂ることが、糖尿病の予防に有効である。」という食事療法のガイドラインに記載が追加されました。その中身の一部を抜粋しますと、
野菜など食物繊維に富んだ食材を主食より先に食べること就寝前にとる夜食を控えること朝食を抜かないこと、肥満症例では、総エネルギーの適正化、欠食や就寝前の間食摂取を止めるなど、食事摂取行動改善への介入が必要などといったものが挙げられました。これにより高血糖の是正や、2型糖尿病発症リスクの予防が可能と考えられています。

 食事の回数は、朝食はぬかず2食より3食が望ましいとされています。しかしその意味を知っている患者さんは少ないです。2食に減る事で空腹時間が長くなることにより、遊離脂肪酸濃度が高まり、インスリン、GLP1などの反応低下を認め血糖値が上昇してしまうことが報告されています。
朝食を摂って自己のインスリン分泌を刺激することで、インスリン拮抗ホルモンを抑え血糖上昇がなだらかになります。
 まずは朝食を抜いている患者さんには、少しでもいいから朝に何かしらの糖質を摂取する習慣を提案し、自己のインスリン分泌を促すことを提案してみることがすすめられます。

 日本でのアンケート結果からは、首都圏在住の男性では1日の摂取カロリーのうち夕食の占めるカロリー摂取は約40%と、どうしても朝、昼、夕と摂取カロリーが増えていくことが分かっています。
ほとんどの働き盛りの日本人にとって朝は忙しくゆっくり食事がとれず、夜に1日で1番多く摂取するというのは一般的であり、これが疾病に悪影響を及ぼしていると自覚していても変えていくのは難しいように感じます。また、夜食の習慣がある人は、ない人より糖尿病、肥満の割合、複数合併症を抱えるリスクが高いこともわかっています。

 当然ながら、急に生活習慣を180度変えられるかというと、そんなに簡単ではなく、私個人は、最初に毎日できなくても全然いい、出来る日だけ出来る分だけやってみてと徐々に少しずつの改善を提案しています。
朝ごはんは食べなくても、ほんの少し何か糖質を朝に摂取しインスリンを刺激しましょうとか、例えば仕事が忙しくて夕飯が遅くなりそうだと明らかに分かっている日だけは、昼ご飯を多めに食べて夕飯は少なめにしましょうなど、0か100ではなく1でも少しずつ改善するような行動変容を提案しています。

「総摂取エネルギーの設定」

 一般に食事200-500Kcal/日減量することで1ヶ月に2-4kgの減量になると考えられています。カロリー制限をする上で考慮する点としては、脳や筋肉はエネルギー基質として主に糖質を利用しており、1日100-150g/日は最低限必要とされていることです。

 低糖質の食事療法の研究も進んではいますが、炭水化物比率が40%未満の制限は、結果的に蛋白・脂質の比率が増加するため長期的には腎症や動脈硬化の進行の懸念があり推奨はされないともされております。
また、動物由来の食品を多くとり、低炭水化物食を続けると、総死亡、心血管死、癌死亡のいずれも増加することはメタ解析でも報告されております。
低糖質食は、特に合併症がなく、短期的な体重減少目的には効果が期待できるが、長期に実施する場合は極端な制限はするべきではないと考えられます。

「食事やタイミングに関するポイント」

炭水化物の摂取量を管理する

血糖値の急激な上昇を避けるために、炭水化物の摂取をコントロールし、高GI(糖質指数)食品を避け、高繊維で低GI食品を選択します。
例) 玄米や全粒小麦製品、オートミール、レンズ豆などの低GI食品。

健康な脂質を選ぶ

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を制限し、代わりに不飽和脂肪酸を摂取するよう心がけます。
例) オリーブオイルや亜麻仁油、アボカドやナッツなどの不飽和脂肪酸

たんぱく質をバランスよく摂取

豆類、魚、鶏肉などの低脂肪で高たんぱくな食品を摂ること、また多様なタンパク源を取り入れ、赤身肉や乳製品を適切にバランスさせることが重要です。
例) 鶏胸肉や豆腐、魚の摂取。

④食事の回数とタイミング

朝8時までに朝食を摂取、または8時~18時までに3食を終わらせると時差ボケによるインスリン抵抗性の悪化(時計遺伝子説)がしづらいことが報告されています。
例)2食よりは3食、朝食は可能であれば8時までに、夕食は18時までに、間食は3食に併せて摂取、1日のうち夕食での摂取量が一番多くならないようにする、夜食は止めるなど。

食品のラベルを確認、加工食品に注意

コンビニなどで提供される多くの加工食品には、高糖分や高脂肪、高リン、高塩分の食品などがあり、糖尿病や糖尿病性腎症の管理には適していない場合もあります。
そのため、糖尿病患者がコンビニでの食事を選択する際には、ラベルを確認して炭水化物、脂質、たんぱく質の含有量を確認し、バランスの取れた食事に注意を払うことが重要です。
低GI食品などを選択し、血糖値の急激な上昇を防ぐことが求められます。

たんぱく質をバランスよく摂取

豆類、魚、鶏肉などの低脂肪で高たんぱく食品を摂ること、また赤身肉や加工肉の摂りすぎを控え、乳製品、多様なタンパクを取り入れ、適切にバランスよく摂取すことが重要です。
例) 鶏胸肉や豆腐、魚の摂取。

飲み物の選択

砂糖入り飲料やアルコールの摂取は控え、水やお茶、ブラックコーヒー、紅茶、甘味料を使用しない無糖の飲み物を選ぶことが重要です。

これらのポイントを理解し、実践することで、食事管理がより効果的になると考えられます。当院では、食と運動を楽しむ会を年2回開催しています。詳しく聞きたい方は受診時にご相談ください。
気軽に無理なくやっていきましょう。

参考文献
Diabetes Care 2015;38:1820–1826
日本栄養・食糧学会誌 2008; 61(6): 273-283
Diabetes Care 2006; 29(8): 1800-1804
ArchInternMed.2007;167:956-965
J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019;10:721-733. その他